ソフトウェア開発のエスワイシステム(本社・名古屋市東区東片端)は、徹底した 人材教育と確かな技術開発力で躍進をつづける新進企業である。中国企業との提携、 上海現地法人の設立など堅実経営のなかに斬新な企業指針が見え隠れする。創業社長 である鈴木裕紀氏にフロンティア精神、独自の経営指針を語ってもらった。
総合ソフトウェア開発企業として、法人を対象にシステムインテグレーションサービスを提供するエスワイシステムはあらゆるユーザーニーズに応え、最先端技術と豊富なノウハウで情報化社会の中核に挑戦しつづけている。 徹底したコスト競争力と技術開発力で、顧客要求を突く提案型営業、顧客業務の核を担う技術力、個性・挑戦・感性を尊重した組織創造を経営の姿勢とし、情報システムを通して高度な人材と技術を社会に還元している。「攻め」の情報システムで社内外の情報の戦略的活用を推進することでユーザーからの絶大な信頼を獲得、いま注目を浴びる新進企業だ。そして今年、同社はインターネット網を活用した低価格テレビ会議システムが大好評を博し、さらに注目を集めることになった。考案されたテレビ会議システム「網映聞/モウエモン(商人・アキンド)」は、既存のものでは総費用600〜800万円掛かるといわれるテレビ会議システムを20万円から設置できる画期的なもので、口コミと問い合わせのみで爆発的人気を博したのである。
もともとは社員が社内で使用するために内々で作られたシステムだったが、あまりにも安価なため口コミで広がったというわけ。たとえば、中国―韓国―名古屋―東京の四ヶ所設置 なら約100万円、高画質・高音質でチャット機能 までついた破格な会議システムは特に海外支局がある企業に好評でコスト削減に大きく貢献した。「同システムは開発の副産物のようなものなので、敢えて特別に宣伝したり販売部隊をつくるつもりはありません。当社の技術力の宣伝にはなりますが、社 会貢献の意味合いの方が大きいですね」とさらりと答える鈴木社長。 商売に直結させようと血眼になっている様子は微塵もない。いったいどのよう会社なのか、すっかり興味を掻き立てられてしまった。
■斬新さが光るユニーク経営
同社は1991年1月、資本金300万円で独立系ソフトウェアハウスとして設立された。設立4年後には資本金を1000万円に増資97年に関連会社エスネットワークを設立した。また99年からは中国西安市のソフトウェア会社と業務提携し中国進出を開始。中国西安の法人と共同出資で名西電脳有限会社を設立するほか昨年には中国製造工程業務の俊敏化を目指し、現地法人・上海裕日軟件有限公司を設立。従業員は30名で、社長を現地人に任せる積極経営を展開中だ
社長の鈴木裕紀氏は、26歳で東京本社のソフトウェア会社を退社後、後輩の安田鉄也氏(現専務取締役)とともに法人対象のソフトウェア開発を自宅で開業、これがエスワイシステムの起源となったのである。
当時は、バブル全盛の時代。請負ではあったが、仕事は順調に舞い込み、わずか1年で社員10人の所帯を持つまでに。しかし、開業から数年でバブルが崩壊。黙っていても転がり込んできた仕事はプッツリと途絶え、試練の時代が訪れた。その後エンドユーザーの開拓を見よう見まねで始めたり、オープン系・制御系のソフトウェア開発を開始するなど、知恵を振り絞って時代に立ち向かった。業務拡大を最大の使命とし、24時間体制で仕事に挑む。その甲斐あって下請けから脱出、スポンサー直の仕事が膨らんでいったのである。
「ひどい時は社員が6人まで減少したことも。資金繰りも厳しく、スポンサーから借金したこともありましたね。人からの信用が会社にとっていかに大切なことか思い知りました」
毎日がギリギリの勝負――。そんな日々を過ごした鈴木社長は、困難を経営に活かすだけでなく、人と人との繋がり、精神面での重要さを学んだ。
「金儲けだけを目的に顧客と接すればいくらでも取り替えの効く取引先になってしまう。小社会に貢献する仕事をしてこそ、生き残れる会社になるのです」

■「勝ち組」へ向けた 確かな堅実経営
軌道に乗ったと実感したのは96年頃から。大手の注文が増え、社員数も順調に増加。社員はシステムエンジニア、サービスエンジニア、セールスエンジニアの三役を誰もがこなせる教育を施した。また精神の成熟を重視した鈴木社長は、企業倫理観・誠意・真心を大切に社員一人ひとりが人脈を拡大できるよう、技術とともに精神面の成長を促す努力を惜しまなかった。「当社の"売り"は何かと聞かれれば、私は迷わずコスト競争力と技術力、そしてチームワークであると答えます。お客様にとって何が一番重要かを常に考える。付加価値を付けるのは、その次の段階であると認識しています」人材に関して独自のポリシーを持つ鈴木社長は新卒・中途採用ともに未経験者を選ぶ。技術畑も営業畑も全てゼロから教育がおこなわれるのである。「集団の力を大切にしたい私は、社員は一貫して未経験者のみを採用しています。こうしたことに手間をかけるのは私くらいでしょうか・・・。 業務上、トラブルにどう対処するかが極めて重要なことであり、それにはチームワークが絶大な力を発揮します。これこそ会社にとっての大きな糧なのです」厚生労働省から、教室を持たない企業ではこの地区で初めて事業主委託訓練金が支給されるなど教育における認知の幅も広がっていった。またコンピュータトラブルの際は高額な負担を負っても任された仕事をやり切る体制を貫き、企業間・人と人との信頼を着実に構築。年商5億までは「営業部」を置かず、各エンジニアが自らの技術を以って次の仕事に繋げていたのも特徴的だ。
現在、従業員数は70名。2003年7月実績は10億5000万円。昨年度の実績は8億4500万円で、来年度の予測は12億8000万円を掲げている
長引く景気低迷のなか、右肩上がりの実績を残す同社に、底力溢れる堅実経営の根っこが見えてくる。「現在の倍の売上になるまでは経営方針を変えるつもりはありません。倍の目標を達成した暁には、製品開発に傾注し販売に力を注いでいきたい。システム開発に拘らず、情報に関わることは貪欲に対象にしていきたいですね」さらに条件が合えばM&Aも推進したい、と意欲を燃やす。景気低迷にもビクともしない力強い経営姿勢は、冬の時代を乗り切った企業だからこそ構築できたものではないだろうか。
もはや、企業が純粋な利益のみを追求する時代は終わった。未来を見据えた堅実な姿勢、地に足のついた経営が「勝ち組」への扉を開ける。
|