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中平コラムSeries132:「美しい理想」が現場で嫌われる理由と、“やりたい理想”の作り方って話

作成者: 中平裕貴|2025年09月03日

こんにちは、エスワイシステム関東の中平です。

 

 

先週末、任せきりだった領域で綻びが出て、急きょ現場に入って立て直し作業に追われました。

そのバタバタの最中、ふと気づいたんです。

 

「ああ、また “美しい理想” を作ってしまってたな…」

 

会議室で語られる立派な理想。

 

「お客様に最高の価値を提供する組織になります!」「全員が成長できるチームを作りましょう!」

 

…美しい。だけど、なぜかメンバーの目が冷めていく。

 

今週は、この現象の正体を追ってみました。 

見えてきたのは、理想そのものではなく、“作り方”の問題 だったんです。

 

 

「美しい理想」が白けられる理由

月曜の朝、こんな問いを投げかけてみました。

 

> あなたの職場の「理想」を思い浮かべてください。 

> それを聞いて、胸が熱くなりますか?それとも「また始まった…」と思いますか?

 

もし後者なら、それは “美しい理想” の可能性が高い。

 

美しい理想の特徴:

  • 抽象的で誰でも言える
  • 行動が見えない
  • 分ごとにならない 

 

(例) 

「顧客満足度No.1を目指す」 

→ で、私は明日何をすれば?

 

やりたい理想の特徴:

  • 具体的で行動が見える
  • 数値目標が明確
  • 自分の役割が想像できる 

 

(例)

「年商15億達成のために、宇宙イチ提案力の高いチームになる」 

→ 提案力か、私にもできそう!

 

この「温度感の差」、現場は敏感に感じ取っているんです。

 

 

理想は「理念」ではなく「逆算」から生まれる

多くのリーダーがやりがちな間違いは、こうです。

 

「理念を語って、あとから数値を当てはめる。」

 

でも僕が現場で学んだのは、逆のアプローチ でした。

 

「まず「現実的な数値目標」を置き、そこから “理想” を逆算する。」

 

(例)

❌「お客様第一の組織になって、売上15億を目指そう」 

⭕「どうしたら “宇宙イチ素敵に” 売上15億を達成する組織になるか?」

 

この「宇宙イチ素敵に」のような修飾語があることで、  現実感とワクワクの両立 が起きる。

 

  • 数値がある → 脳が「どうやって?」と動き出す
  • ワクワク語がある → 心が「ちょっとやってみたい」と感じる

 

これが、「やりたい理想」の設計図なんです。

 

 

心理的安全性という、見えない土台

ただし、いくら問いがよくても、こう言われたら固まります。

 

「何か意見ありますか?」

→ シーン…

 

そこで大事なのが、「仕組み」で安全性を確保する こと。

 

僕が現場で使っている方法:

 

「本音は、紙に書かせる」

 

たった一言、

 

「今から3分、紙に書いて提出してください」

 

これで、会議の空気がガラッと変わります。

 

なぜ紙が効くのか?

 

  1. 匿名性の安心感
  2. 考える時間の確保
  3. 上司の顔色を見ない
  4. 全員参加の強制力

 

 

「まず称賛する」という、最強のルール

意見を読み上げるとき、最も大事なのがこのルール。

 

出された意見は、必ずまず称賛する:

❌「これは現実的じゃないですね…」 

⭕「面白い視点ですね!○○の部分が特に興味深いです」

 

そして、

 

ルールを明文化する:

❌ 批判・否定 → NG 

⭕ 提案・リクエスト・質問 → OK

 

批判を恐れなくなったとき、本当にやりたいこと が言葉になる。

 

 

「作るのは全員」「決めるのは一人」

最後の鍵は、この 絶妙な分担バランス

 

  • チーム全員で本音を出し合い、繋げて一文をつくる
  • 一文目は、数値目標から始める
  • 出された意見を分類し、構造化して再構成する
  • 最終決定は、代表者(リーダー)が責任を持って判断する

 

「これは、自分たちの北極星(理想)である」

 

こうして、誰も否定できない “腹落ちした理想” が生まれるんです。

 

 

「共犯者」が生み出す理想は、強い

なぜ、“みんなで作った理想” は強いのか?

答えはシンプル。

 

「自分も “共犯者” だから、否定できない」

 

「この理想、現実的じゃないよね」  「でも君も一緒に作ったよね?」

 

この心理効果は、強烈です。

 

 

エピローグ:バタバタの現場で見つけた、“やりたい理想”

冒頭の緊急立て直し。

最初は、僕が一人で「こうすべきだ」という “美しい解決策” を考えていた。

でも、メンバーを巻き込んで「どうしたい?」を話し合った瞬間、空気が変わったんです。

 

「あ、それなら面白そう」 「私もやってみたいかも」

 

結果、想定以上のスピードで立て直しが完了しました。

 

リーダーの仕事は、理想を語ることじゃない。  その理想に向かうストーリーを、“みんなで描く”こと

 

来週は、どんな事件が待っているでしょうか。 

また新しい「やりたい理想」が、生まれるかもしれません。

 

 

 

 

著者情報


 

中平 裕貴(Yuki Nakahira)

株式会社エスワイシステム 関東事業本部

関東第2事業部 3SEシステム5部 事業部長代理

 

『技術 × 事業戦略 × 組織運営をつなぐ実務家』

 

エンジニアとしての技術的な知見を持ちながら、営業・事業運営・HR・組織マネジメントの視点も持つ実務家。

エンジニア、グループ会社経営、営業を経験し、技術とビジネスの両方を理解した「橋渡し役」として事業推進に携わる。

技術と組織運営をつなぎ、主体的なチームを育て、人々が「WANT TO」で動ける社会を目指す。

 

🛠 技術領域

アプリ開発、クラウド、データ分析、AI、

📈 事業・営業経験

SI事業の拡大、プロジェクトマネジメント、アジャイル

🏗 組織マネジメント

リーダー育成、組織改革、チームビルディング

 

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