ブログ

中平コラムSeries134:AIにコードを書かせても、僕の仕事は楽にならなかったって話

作成者: 中平裕貴|2026年08月17日

こんにちは、エスワイシステム関東の中平です。

AI開発の話をすると、たいてい「コードを書かせる」ところから想像されます。

でも僕の最初は、コードではなく、要件定義や設計をAIと一緒にやるところからでした。

 

これまで、AIとどう仕事をしてきたか

まだ「コンテキスト」という言葉が、今ほど浸透していなかった頃です。

用語として知っていたというより、感覚で掴んで、そう言っていた。

 

いまの状況や、自分の立場で分かる前提を渡すほど、出てくるアウトプットがイメージに近づく
だから渡せるものはできるだけ乗せて進めていました。

結果、AIと一緒に作るアウトプットは、そこそこの質になっていた記憶があります。

しんどかったのは、そのあとです。

AIの出力をパワポやExcelにまとめながら、脳内でずっとレビューし続ける。ハルシネーションも多い。

指摘が多いと、直してない部分も気づかないうちに変わる。

毎回一から読み直すような感覚で、レビューが、めちゃくちゃ面倒だった

なので当時のやり方はこうでした。

構想や組み立ては、ある程度まで僕とAIで作る。それを人間のコーディングに通す。

コードにする過程で、ふわっとした嘘やズレがあぶり出される——そんな使い方です。

いま振り返ると、あれは「AIに書かせて速くする」というより、人が検証できる形に落とすまでが、仕事の本体”だったんだと思います。

もちろん当時、メンバーもAIでコードを書いていました。

ただ強く記憶に残っているのは、人によって品質のブレが大きかったことです。

仕様をちゃんと解釈できる人は、プロンプトも上手くて、出てくるプログラムの質も高い。

仕様を表面的に受け取る人は、どうしても品質が乗らない。

つまりAIは、理解している人の手を加速し、理解が浅い人の「わかったつもり」も加速してしまう。どこかで聞いた言葉に近い。

AIは強い人をより強くし、弱い人をより弱くする

厄介だったのは、弱い側が何も出せない、ではなかったことです。

むしろ一見、形になっている。それっぽく動く。画面もある。本人もできた気でいる。なのに中身はつぎはぎで無茶苦茶。

レビューすると、仕様の解釈の浅さが、そのままつぎはぎの跡になって出てきます。

道具の差というより、仕様を読む力の差が、そのまま成果の差になっていた

この経験が、あとで「プロンプト集を配れば、プロジェクトは回る」とは思えなくなった原点です。

(前にもコラムでAIの話は書きました。でも、やり方が一段深いところに来たので、今日はその続きを書きます。)

 

 

 仕事を型に落とす

いまの僕の仕事の大半は、コードをきれいに書き上げることじゃありません。

何を直すか決める、調べて指示を書く、レビューしてもらう、実装に渡す、試験して結果を残す、うまくいかなければ指示に戻る——

この流れです。

コードを書かせるだけだと、このうち一部しか速くなりません。

だから「速くなったのに、仕事は減らない」。

なので今は、繰り返している仕事そのものを、AIが迷わず走れる形に落とすことに力を入れています。

手順や判断の置き場、やっていいこと・ダメなこと、終わったと言える条件。

人によってブレていた「仕様の読み方」を、毎回説明し直すのではなく型として残す。

プロンプトを一枚配る、ではありません。

 


 順番は、Goal → Loop → AI

大事なのは、この順番です。

 

  1. Goal

    誰にとって、どんな現実が、どうなれば成功か 

     

  2. Loop
    そのために繰り返している仕事は何か

     

  3. AI

    そのループのどこを、どのように、AIに任せるか 

 

逆から入ると危ない。

「とりあえずAI」「とりあえずコードを書かせる」「動いたから成功」——道具が主役になって、行き先が曖昧なままレールだけ増えます。

 

AI駆動開発とは、AIにコードを書かせることではない。

AIが仕事を進められるように、仕事そのものを構造化することである

 

AIは線路を敷いて走る。行き先を決めるのは人。

この分担を先に決めないと、また「形だけ・つぎはぎ」が増えます。

 

 

「動いた」を成功にしない

だから、いきなり「AI駆動のPoCやりましょう」と言いたくないんです。

 

危ないのは、だいたいこの順番です。

ツールを入れる、サンプルでコードを書かせる、画面が動く、「成功でした」。

でも現場の仕事は、その先にレビューも試験も引き継ぎも、やり直しもある...。

 

画面が動いた、は成果物です。

困りごとが減った、が成果です

 

動いたデモは成果物にはなる。でも、利用者の困りごとが減ったかは別の話です。

だから入り口は、完成パッケージを先に売るより、

「いま何を成功させたいか」「何を繰り返しているか」を一緒に聞くところから、と思っています。

 

使わない、という結論が出てもいい。それも仕事のうちです。

 

 

おわりに

最初の頃の僕は、AIと要件や設計を組み立て、人のコーディングであぶり出し、それでもレビューに消耗していました。

いまは、コードより手前の「仕事の型」に手を入れ始めています。

 

楽になったか、と聞かれたら——正直、まだ道半ばです。

 

いや、僕だけは楽になったかも。

でも現場の仕事全体が速くなったかと聞かれると、まだ違う。

ただ、「プロンプトを配れば回る」とも、「コードが速くなれば開発が速くなる」とも、もう思っていません。

 

行き先を決めるのは人。道具はあとから、でいい。

 

 

 

 

著者情報


 

中平 裕貴(Yuki Nakahira)

株式会社エスワイシステム 関東事業本部

関東3SEシステム事業部 社会情報インフラ部 

エバンジェリスト

 

『技術 × 事業戦略 × 組織運営をつなぐ実務家』

 

エンジニア・経営・営業を経て、技術とビジネスの橋渡し役を担ってきた。
現在は AI駆動開発を「コードを書かせること」ではなく、Goal → Loop → AI の順で仕事そのものを型にする実践として進めている。
仕事を構造化し、現場に価値が残る形で届ける。

 

🛠 技術領域

アプリ開発、クラウド、データ分析、AI、

📈 事業・営業経験

SI事業の拡大、プロジェクトマネジメント、アジャイル

🏗 組織マネジメント

リーダー育成、組織改革、チームビルディング

 

📩 お問い合わせ・お仕事のご相談はこちらから↓