こんにちは、エスワイシステム関東の中平です。
「SIer業界はクラウドファーストへ」と言われて久しい。
多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を掲げ、クラウド化を推進しているように見える。
しかし、実際のところSIerは本当にクラウドビジネスへシフトできているのか?
私はSIerのプロジェクトに関わる中で、「DX=クラウド化」ではなく、ただの業務改善やシステム刷新を“DX”と呼んでいるケースが多いと感じる。
本記事では、富士通・NTTデータ・NEC・日立製作所といった主要SIer企業のクラウド戦略を分析し、
どの企業が成功しているのか? どこが遅れを取っているのか?
についてデータと実務視点で考察していきます。
📊 市場規模と主要プレイヤー
企業名 | 市場シェア | クラウド戦略の特徴 |
---|---|---|
NTTデータ |
国内首位 |
AI・生体認証技術を活用したクラウド。 公共セクターや安全保障分野のデジタル化を支援。 |
NEC | 第2位 |
グローバル展開強化。金融業界向けクラウドが強み。 AIデータ分析を活用。 |
富士通 | 第3位 |
自社クラウド「FUJITSU Cloud Service」を展開。 パブリック&プライベートクラウド対応。AI/IoTと連携。 |
日立製作所 | 第4位 |
製造業・社会インフラ向けクラウド「Lumada」を展開。 IoT+AIを活用し産業DXを推進。 |
各社のIR資料を調査したが、具体的なクラウド売上比率を公表している企業はほぼ存在しない。
これは、クラウド事業がまだ確立していない、または受託開発と混在していることを意味していると推測できる。
しかし、各社の事業動向から、クラウドシフトの進捗状況を以下のように推測できる。
今後、SIerがクラウド市場で競争力を持ち続けるためには、以下の3つの戦略が重要となる。
・SIer業界のクラウド転換は「部分的に成功、しかし全体としては道半ば」
・一部の企業(富士通、NTTデータ)はクラウド売上を伸ばしているが、業界全体では受託開発からの脱却が進んでいない
・DX投資は増えているものの、それがクラウド事業の成長に直結しているとは限らない
・今後のSIerの課題は、「どこまでクラウドネイティブになれるか?」
・受託開発からSaaSやマネージドサービス提供へシフトできる企業が生き残る
ここまで、SIer業界のクラウド転換の現状と課題をデータと市場分析の視点から考察してきました。
多くの企業が「人月商売の限界」を指摘し、受託開発からの脱却を模索しているのは事実としてはあります。
しかし、個人的な見解としては、受託開発というスタイルが持つ価値の見直しも必要であると考えています。
受託開発は「労働集約型」「スケールしづらい」と言われますが、人が集まり、力を合わせて1つのシステムを作り上げるその過程こそが、ものづくりの本質ではないのでしょうか?
クラウドやAIを活用した自動化・効率化が進む時代(推進している立場の私としても)でも、
「人の手で試行錯誤しながら、最適解を探していくプロセス」には、独特の魅力があります。
クラウドが進化し、SIerが事業モデルを変えていくことは避けられない流れではありますが、受託開発という「人が主役のものづくり」が完全になくなるとは思えませんし、むしろ「人だからこそできる価値提供」が求められる時代になるとも言えます。
だからこそ、SIerの未来は、「クラウドと受託開発のバランスをどう取るか?」にかかっているのではないのでしょうか。
中平 裕貴(Yuki Nakahira)
株式会社エスワイシステム 関東事業本部
関東第2事業部 3SEシステム6部 事業部長代理
『技術 × 事業戦略 × 組織運営をつなぐ実務家』
エンジニアとしての技術的な知見を持ちながら、営業・事業運営・HR・組織マネジメントの視点も持つ実務家。
エンジニア、グループ会社経営、営業を経験し、技術とビジネスの両方を理解した「橋渡し役」として事業推進に携わる。
🛠 技術領域
アプリ開発、クラウド、データ分析、AI
📈 事業・営業経験
SI事業の拡大、プロジェクトマネジメント、アジャイル
🏗 組織マネジメント
リーダー育成、組織改革、チームビルディング
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