中平コラムSeries132:「美しい理想」が現場で嫌われる理由と、“やりたい理想”の作り方って話

“美しい理想”と“やりたい理想”。両者の違いは、言葉ではなく“作り方”にあった。

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  • こんにちは、エスワイシステム関東の中平です。

     

     

    先週末、任せきりだった領域で綻びが出て、急きょ現場に入って立て直し作業に追われました。

    そのバタバタの最中、ふと気づいたんです。

     

    「ああ、また “美しい理想” を作ってしまってたな…」

     

    会議室で語られる立派な理想。

     

    「お客様に最高の価値を提供する組織になります!」「全員が成長できるチームを作りましょう!」

     

    …美しい。だけど、なぜかメンバーの目が冷めていく。

     

    今週は、この現象の正体を追ってみました。 

    見えてきたのは、理想そのものではなく、“作り方”の問題 だったんです。

     

     

    「美しい理想」が白けられる理由

    月曜の朝、こんな問いを投げかけてみました。

     

    > あなたの職場の「理想」を思い浮かべてください。 

    > それを聞いて、胸が熱くなりますか?それとも「また始まった…」と思いますか?

     

    もし後者なら、それは “美しい理想” の可能性が高い。

     

    美しい理想の特徴:

    • 抽象的で誰でも言える
    • 行動が見えない
    • 分ごとにならない 

     

    (例) 

    「顧客満足度No.1を目指す」 

    → で、私は明日何をすれば?

     

    やりたい理想の特徴:

    • 具体的で行動が見える
    • 数値目標が明確
    • 自分の役割が想像できる 

     

    (例)

    「年商15億達成のために、宇宙イチ提案力の高いチームになる」 

    → 提案力か、私にもできそう!

     

    この「温度感の差」、現場は敏感に感じ取っているんです。

     

     

    理想は「理念」ではなく「逆算」から生まれる

    多くのリーダーがやりがちな間違いは、こうです。

     

    「理念を語って、あとから数値を当てはめる。」

     

    でも僕が現場で学んだのは、逆のアプローチ でした。

     

    「まず「現実的な数値目標」を置き、そこから “理想” を逆算する。」

     

    (例)

    ❌「お客様第一の組織になって、売上15億を目指そう」 

    ⭕「どうしたら “宇宙イチ素敵に” 売上15億を達成する組織になるか?」

     

    この「宇宙イチ素敵に」のような修飾語があることで、  現実感とワクワクの両立 が起きる。

     

    • 数値がある → 脳が「どうやって?」と動き出す
    • ワクワク語がある → 心が「ちょっとやってみたい」と感じる

     

    これが、「やりたい理想」の設計図なんです。

     

     

    心理的安全性という、見えない土台

    ただし、いくら問いがよくても、こう言われたら固まります。

     

    「何か意見ありますか?」

    → シーン…

     

    そこで大事なのが、「仕組み」で安全性を確保する こと。

     

    僕が現場で使っている方法:

     

    「本音は、紙に書かせる」

     

    たった一言、

     

    「今から3分、紙に書いて提出してください」

     

    これで、会議の空気がガラッと変わります。

     

    なぜ紙が効くのか?

     

    1. 匿名性の安心感
    2. 考える時間の確保
    3. 上司の顔色を見ない
    4. 全員参加の強制力

     

     

    「まず称賛する」という、最強のルール

    意見を読み上げるとき、最も大事なのがこのルール。

     

    出された意見は、必ずまず称賛する:

    ❌「これは現実的じゃないですね…」 

    ⭕「面白い視点ですね!○○の部分が特に興味深いです」

     

    そして、

     

    ルールを明文化する:

    ❌ 批判・否定 → NG 

    ⭕ 提案・リクエスト・質問 → OK

     

    批判を恐れなくなったとき、本当にやりたいこと が言葉になる。

     

     

    「作るのは全員」「決めるのは一人」

    最後の鍵は、この 絶妙な分担バランス

     

    • チーム全員で本音を出し合い、繋げて一文をつくる
    • 一文目は、数値目標から始める
    • 出された意見を分類し、構造化して再構成する
    • 最終決定は、代表者(リーダー)が責任を持って判断する

     

    「これは、自分たちの北極星(理想)である」

     

    こうして、誰も否定できない “腹落ちした理想” が生まれるんです。

     

     

    「共犯者」が生み出す理想は、強い

    なぜ、“みんなで作った理想” は強いのか?

    答えはシンプル。

     

    「自分も “共犯者” だから、否定できない」

     

    「この理想、現実的じゃないよね」  「でも君も一緒に作ったよね?」

     

    この心理効果は、強烈です。

     

     

    エピローグ:バタバタの現場で見つけた、“やりたい理想”

    冒頭の緊急立て直し。

    最初は、僕が一人で「こうすべきだ」という “美しい解決策” を考えていた。

    でも、メンバーを巻き込んで「どうしたい?」を話し合った瞬間、空気が変わったんです。

     

    「あ、それなら面白そう」 「私もやってみたいかも」

     

    結果、想定以上のスピードで立て直しが完了しました。

     

    リーダーの仕事は、理想を語ることじゃない。  その理想に向かうストーリーを、“みんなで描く”こと

     

    来週は、どんな事件が待っているでしょうか。 

    また新しい「やりたい理想」が、生まれるかもしれません。

     

     

     

     

    著者情報


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    中平 裕貴(Yuki Nakahira)

    株式会社エスワイシステム 関東事業本部

    関東第2事業部 3SEシステム5部 事業部長代理

     

    『技術 × 事業戦略 × 組織運営をつなぐ実務家』

     

    エンジニアとしての技術的な知見を持ちながら、営業・事業運営・HR・組織マネジメントの視点も持つ実務家。

    エンジニア、グループ会社経営、営業を経験し、技術とビジネスの両方を理解した「橋渡し役」として事業推進に携わる。

    技術と組織運営をつなぎ、主体的なチームを育て、人々が「WANT TO」で動ける社会を目指す。

     

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