中平コラムSeries36:認知戦とは?プロジェクトにおける認知戦の活用とエンジニアの在り方って話

エンジニアの「当たり前」をコントロールし、チームの結束力と品質を向上させるための実践的な認知戦略を紹介。

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  • こんにちは、エスワイシステム関東の中平です。

     

    前回の記事を書いたら、「認知戦」ってなに?と質問をいただいたので認知戦について書いてみます。

    (前回の記事はこちら → 中平コラムSeries35:新人登用プロジェクトがうまくいく理由と、僕が感じる「ズルさ」って話

     

    「認知」とは、私たちが世界をどのように認識し、解釈し、判断するかを決める心のプロセスのことを指します。

    これには、情報の取得、処理、意味づけが含まれます。

     

    同じ出来事でも、人によって受け取り方や解釈が異なるのは、各人の認知の仕方が異なるためです。

     

    認知は、個人の経験や文化、教育、環境などによって形成されます。

     

    そして、それが集団レベルで共有されると、組織の意思決定や行動様式に影響を与えます。

     

     

    歴史上の認知戦とプロパガンダ

    認知戦(Cognitive Warfare)は、相手の認識や価値観、判断力に影響を与えることで、行動をコントロールする戦略です。

    これは、軍事や政治の分野でよく見られるものであり、プロパガンダ(宣伝戦)とも密接に関係しています。

    例えば、冷戦時代の米ソ対立では、お互いに自国の価値観を優位に見せるための情報戦が展開されました。

     

    また、近年ではSNSを利用した世論操作やフェイクニュースの拡散など、デジタル空間での認知戦が活発化しています。

     

    直近の例としては、兵庫県知事の問題が挙げられます。

    内容は省略しますが、ある特定の視点やイメージを強調することで、世間の認識を意図的に操作するケースです。

     

    これは政治の世界だけでなく、ビジネスの世界でも行われています。

     

     

    プロジェクトにおける認知戦の活用

    エンジニアリングの世界でも、認知戦の概念は活用できます。

    特に、プロジェクト管理やチーム運営において、どのような「認知」をチーム内で定着させるかは、プロジェクトの成功に大きく関わります。

     

    1. エンジニアの「認知」をコントロールする

    プロジェクトにおける認知戦の一つは、エンジニアにとっての「当たり前」を定義し、それをチーム全体に浸透させることです。

     

    例えば、

    • 「コードは可読性を最優先するべき」
    • 「レビューは厳しくするが、成長のためのフィードバックとする」
    • 「成果物は美しくあるべき」

     

    こうしたポリシーを明確にしてチーム全体に認知させることで、プロジェクトの品質を一定以上に保つことができます。

     

    これは、「認知のコントロール」とも言えます。

     

    2. 認知の方向性を整える

    チーム内で「このプロジェクトは成功する」と認識されれば、メンバーのモチベーションや行動が変わります。

    逆に、「うまくいかないかもしれない」と不安が広がると、チームの雰囲気がネガティブになり、生産性が低下します。

     

    そのため、リーダーが「成功が前提である」ことを伝え続けることが重要です。

     

    例えば、

    • 小さな成功を積み重ね、チームの認知をポジティブに保つ(グータッチなどの習慣
    • 進捗を視覚化し、「順調に進んでいる」と実感できるようにする
    • プロジェクトの成果物を美しく仕上げることで、「良い仕事をしている」と認識させる

     

    3. 認知の歪みを正す

    チームメンバーが誤った認識を持っていると、それがプロジェクト全体に悪影響を与えることがあります。

     

    例えば、「手を抜いても大丈夫」「テストは後回しでもいい」などの認知が広がると、プロジェクトの品質が低下します。

    このような状況を防ぐために、定期的なフィードバックやレビューを通じて、正しい認知をチームに植え付けることが必要です。

     

    具体的には、

    • コードレビューで「なぜこの書き方が良いのか?」を説明する
    • プロジェクトのポリシーを繰り返し伝える
    • 成果物のクオリティ基準を厳格にし、「美しくないものはリリースしない」という認識を作る

     

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    そうすると、こんないいことがある

    「認知戦」をプロジェクトに取り入れることで、以下のような良い影響があります。

     

    1. チームの結束力が高まる
      • 共通のポリシーや目標を持つことで、チーム全体の方向性が揃う。
      • 認知のズレをなくすことで、無駄な議論や摩擦が減る。

    2. プロジェクトの品質が向上する
      • 「美しい成果物を作る」という認知が広がれば、全員が細部にこだわるようになる。
      • 認知の基準が統一されることで、品質のブレがなくなる。

    3. 新人でも活躍しやすくなる
      • 「新人だからできない」ではなく、「新人でも挑戦すればできる」という認知が定着すれば、成長スピードが加速する。
      • 成功体験を積むことで、新人の自己効力感が高まる。


    まとめ

    「認知戦」は、単なる心理操作ではなく、組織運営やプロジェクトマネジメントにおいて強力なツールになります。

     

    特に、エンジニアリングの世界では、

    • 認知(エンジニアにとっての当たり前)をコントロールする
    • 認知の方向性を整える
    • 認知の歪みを正す

     

    これらの戦略を意識することで、チームのパフォーマンスを大きく向上させることができます。

     

    つまり、「認知戦」はプロジェクトの成功確率を上げる「ズルさ」でもあり、「合理的な戦略」でもあるのです。

     

     

     

     

    著者情報


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    中平 裕貴(Yuki Nakahira)

    株式会社エスワイシステム 関東事業本部

    関東第2事業部 3SEシステム6部 事業部長代理

     

    『技術 × 事業戦略 × 組織運営をつなぐ実務家』

     

    エンジニアとしての技術的な知見を持ちながら、営業・事業運営・HR・組織マネジメントの視点も持つ実務家。

    エンジニア、グループ会社経営、営業を経験し、技術とビジネスの両方を理解した「橋渡し役」として事業推進に携わる。

    技術と組織運営をつなぎ、主体的なチームを育て、人々が「WONT TO」で動ける社会を目指す。

     

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