中平コラムSeries69:会社は統合した。でもデータはバラバラだったって話
「同じ“商品名”でも社ごとにカラム名が違う」…その全てを解決する“ゴールデンレコード”とは何か?データ統合エンジニアのリアルを面白おかしく語ります。

こんにちは、エスワイシステム関東の中平です。
2024年〜2025年、企業統合のニュースが次々と飛び込んできますね。
・NTTとNTTデータの完全統合
・NTTデータ・マネジメントサービスとNTTデータ・スマートソーシングが合体して「NTTデータ・ウィズ」誕生
・ドコモ傘下のオリックス・クレジットは「ドコモ・ファイナンス」に
・コンコルディアは「横浜フィナンシャルグループ」へ社名変更予定
製造業でもアイシンやライクスなど合併ラッシュが進行中。
各言う我々エスワイシステムもSYSホールディングスという持ち株会社があり、年々グループ会社も増えていってます。
こうして企業が一つになるたびに、経営陣は「未来志向の経営統合!」と語りますが――
その裏では、“システム地獄”が静かに口を開けているのです。
社名は一つ、でもデータは二つ(三つ)
合併したA社とB社。晴れて「株式会社ネオアスカ」みたいな名前になります。
でもその裏では:
・A社の「商品名」 → 商品名
・B社の「商品名」 → 製品名
・C社の「商品名」 → プロダクトネーム
しかも、フォーマットは
・A社 → 全角カタカナ
・B社 → 半角英数字+ひらがな混在
・C社 → 入力自由(!)
「この3社で在庫を統一管理します!」って、言うのは簡単なんですよ。
でも実際は、“三つの言語で書かれた魔法陣”を統一しろって言われてるようなもんなんです。
ゴールデンレコードという理想と現実
そこで登場するのが、「ゴールデンレコード(Golden Record)」。
これは、統合に際して「一番信頼できるデータ1件だけを残す」ための基準。
つまり、各社のデータを見比べて、
・品番の揺れ(AB12345 vs ab-12345)
・ブランド名の略称(ルイ・ヴィトン vs LV)
・登録日のフォーマット(2024/01/01 vs 01-Jan-2024)
を“真の姿”に統一していくんです。
…でもね、誰も「どれが真か」なんて教えてくれないんです。
それぞれの会社が「うちのが正しい」と言い張るから。
ゴールデンレコードを作る作業は、データの精査ではなく、感情の調整作業です。
テンション差、こじれる現場
データ統合は、“全員が同じ方向を向いている”ことが前提。
でも現実は…
・本社:「早く統合してKPI分析できるようにしたい!」
・子会社A:「とりあえず今のExcelで困ってないです」
・子会社B:「別にうちは吸収された気ないですけど…?」
この“統合に対するテンション差”が、
データ項目1個の統一に半年かかる理由になります。
それでもやる意味
なぜそんな苦労をしてまでデータを統合するのか?
答えはシンプル。
「このままだと、誰も全体像を把握できないから」です。
顧客の重複がわからない
全体在庫の最適化ができない
全社横断のレポートができない
ゴールデンレコードは、ただの“正確なデータ”じゃありません。
“未来の意思決定の土台”なんです。
そして、今日も誰かが項目を統一している
このブログを書いている今も、どこかの会議室では「取引先コードが5桁か6桁か」で揉めてるはず。
でも、そこから逃げないのが統合エンジニアです。
データに潜む矛盾を解きほぐし、
温度差を超えて合意を作り、
未来に残せる「一つの真実」を作っていく。
それが、データ統合という仕事の正体です。
まとめ
会社がひとつになっても、データは勝手にはまとまりません。
「ゴールデンレコードを作ろう!」なんて理想を掲げても、
その裏で起きるのは、「このカラム、うちのルールだと…」という静かな戦争。
“正しいデータ”を選ぶなんて、簡単そうに聞こえるけど、
実際は「誰が声が大きいか選手権」みたいなもの。
そして、各社のExcelと感情と文化をひとつにまとめる仕事に、
誰かが静かに向き合っているんです。
その人のキーボードの音が止まったとき、
ようやく“本当にひとつの会社になった”と言えるのかもしれません。
次回は、「データを統合したら価値が生まれるどころか、トラブルが増えた話」でもしましょうか(笑)
著者情報
中平 裕貴(Yuki Nakahira)
株式会社エスワイシステム 関東事業本部
関東第2事業部 3SEシステム6部 事業部長代理
『技術 × 事業戦略 × 組織運営をつなぐ実務家』
エンジニアとしての技術的な知見を持ちながら、営業・事業運営・HR・組織マネジメントの視点も持つ実務家。
エンジニア、グループ会社経営、営業を経験し、技術とビジネスの両方を理解した「橋渡し役」として事業推進に携わる。
技術と組織運営をつなぎ、主体的なチームを育て、人々が「WONT TO」で動ける社会を目指す。
🛠 技術領域
アプリ開発、クラウド、データ分析、AI、
📈 事業・営業経験
SI事業の拡大、プロジェクトマネジメント、アジャイル
🏗 組織マネジメント
リーダー育成、組織改革、チームビルディング
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