中平コラムSeries29:顧客からの仕様変更のパターンとその対応方法についての話

「ソフトウェア開発は軽くない!」顧客からの仕様変更でプロジェクトが混乱する原因とその対応策について解説

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  • こんにちは、エスワイシステム関東の中平です。

     

    ソフトウェア開発において、「仕様変更」は避けて通れないものだ。

     

    特に、顧客側の認識の甘さや、僕たち開発側による業務要件の見落とし、そしてトップダウンの突然の指示など、

    開発者にとっては「またか…」と思う事態が日常茶飯事である。

     

    しかし、ものづくりの業界に比べて、ソフトウェア開発は軽く見られがちなのも事実。

     

    「ちょっと変更できるでしょ?」

     

    の一言で、スケジュールが大幅に狂ったり、予算が膨れ上がることも少なくない。

     

    「システムは勝手に動くものではない!」ということを、もっと世の中に理解してもらいたい。

     

    この記事では、実際に発生しがちな仕様変更のパターンと、それに対する現実的な対応策について解説していく。

     

     

    仕様変更の代表的なパターン

    ① 選定したパッケージ、本当に必要?問題

    (例)要件定義が進んだ段階で、「このパッケージって本当に必要なの?」と議論が再燃

     

    これは、パッケージ導入プロジェクトで起こる問題だ。

     

    要件定義を進める中で、「このパッケージでできること」と「本当にやりたいこと」にズレが発生し、

    「これ、別の手段の方がよくない?」という意見が急浮上する。

     

    原因
    • パッケージ選定時に、本当にやりたいことの深掘りが甘かった
    • 突然、新しい人がチームに加わって意見を言い出した
    • ベンダーのデモを鵜呑みにし、実際の業務適用時のシナリオを十分に検証していなかった
    • 要件定義が進むにつれ、「もっとこうしたい」という要望が膨らんだ

     

    対応策
    • パッケージ選定前にPoC(概念実証)を徹底的に行う
      → 特に「特殊な業務フロー」にパッケージが適応できるか事前検証が必須

     

    • 「導入後にカスタマイズしないといけないなら、カスタム開発の方が良いのでは?」という視点を持つ

     

    • 仕様変更による影響を「コスト」「納期」「業務インパクト」の3軸で整理し、議論を透明化する

     

    ② 業務フローの見落としで「対応不可」になる問題

    (例)仕入れ先以外からの緊急仕入れ、在庫にせずそのまま販売するケースが洗い出されておらず、システムで対応不可に

     

    業務フローの洗い出しが不十分なまま開発を進めると、

    「あれ?このケース、システムで処理できないぞ…」という事態が後から判明する。

     

    業務の特殊性が高いほど、こうした問題は起こりやすい。

     

    原因

    • 業務担当者も「これ、当たり前すぎてわざわざ言わなくてもいいよね?」と思っている
    • 開発担当者がドキュメントに落とさないまま離任
    • システム側のデータモデルが、「例外処理」を想定していない設計になっている
    • 一般的な業務フローは洗い出したが、現場の実際の動きまでは反映されていなかった

     

    対応策

    • 業務フローの整理時に、実際に現場で働く人(特にベテラン)にヒアリングを行う
      → 「システム担当者が把握していない業務の抜け漏れ」を防ぐ

     

    • システムで処理できない業務が発生した場合の「手動オペレーション」の定義を事前に決めておく
      → 「システムでできないなら、現場でどう対応するか?」のルールを決める

     

    • データモデルを設計する際、「特殊ケースに対応する拡張性」を持たせる
      → 例:「仕入れ先以外からの急な仕入れ」なら、一時的な在庫登録機能を持たせる

     

    ③ スーパーカリスマ経営者のスーパートップダウン機能追加

    (例)「社長が突然『この機能を追加しろ!』と指示を出してきた」

     

    これはもう、開発者にとっては恐怖でしかないシナリオだ。

     

    トップが突然「○○の機能を追加しろ」と言い出すと、現場は阿鼻叫喚。

    要件定義もスケジュールもガン無視で、「社長が言ってるから!」の一点突破。

     

    特に、カリスマ経営者がいる会社では、このパターンが発生する。

    しかもカリスマ経営者は本当に顧客のことをよく考えているので、顧客に寄り添った機能だったりするのだ。

     

    原因

    • トップが市場や競合の動きを見て、突然「新機能が必要だ!」と思いついた
    • 経営層がシステム開発の実態(スケジュールや工数)を理解していない
    • 「社長の一言を全て実行する文化」が社内に根付いている

     

    対応策

    • 「経営層向けの開発ロードマップ」を作成し、仕様追加の影響を可視化する
      「この変更を入れるなら、ここのスケジュールがズレます」と明確に示す

     

    • 追加要望を受け入れるための「スプリントバックログ」を用意し、優先度を明確にする
      「この機能を追加するなら、何を削るべきか?」を議論できる状態にする

     

    • 「できること」と「できないこと」をはっきり伝え、代替案を提示する
      → 例:「フル機能開発だと3カ月かかりますが、プロトタイプなら2週間で用意できます」

     

     

    仕様変更にどう向き合うか?

    仕様変更は避けられないもの として捉え、以下のように柔軟かつ合理的に対応できる体制を整えることが重要です。

     

    • 最初から「変更ありきの開発体制」を作る
    • 「システムは勝手に動くものではない」「軽く見ないで!」という認識を顧客と共有する
    • 無茶な仕様変更を防ぐために、「変更後のコスト」を明確に伝える

     

     

    まとめ

    ソフトウェア開発は、ものづくり業界の中では比較的「簡単に変えられる」と思われがちだ。

    しかし、実際には仕様変更はコスト・納期・品質に多大な影響を与える。

     

    「ちょっと変えられるでしょ?」の裏には、開発者たちの血と汗と涙の作業がある。

     

    この事実を、もっと世の中に知ってもらいたい。

     

    仕様変更は避けられないが、事前の対策と適切な対応によって、開発の混乱を最小限に抑えることはできる。

     

     

     

     

    著者情報


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    中平 裕貴(Yuki Nakahira)

    株式会社エスワイシステム 関東事業本部

    関東第2事業部 3SEシステム6部 事業部長代理

     

    『技術 × 事業戦略 × 組織運営をつなぐ実務家』

     

    エンジニアとしての技術的な知見を持ちながら、営業・事業運営・HR・組織マネジメントの視点も持つ実務家。

    エンジニア、グループ会社経営、営業を経験し、技術とビジネスの両方を理解した「橋渡し役」として事業推進に携わる。

    技術と組織運営をつなぎ、主体的なチームを育て、人々が「WONT TO」で動ける社会を目指す。

     

    🛠 技術領域

    アプリ開発、クラウド、データ分析、AI、

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    SI事業の拡大、プロジェクトマネジメント、アジャイル

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