中平コラムSeries57:『大丈夫です』が“断り”になる国、日本って話

『大丈夫です』や『お前』の意味が通じない!? Sさんとの会話から、日本語の曖昧さと文化のズレについて考えてみました。

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  • こんにちは、エスワイシステム関東の中平です。

     

    うちのチームのSさん(中国出身)と日々話していると、当たり前だと思っていた日本語や文化が、

    「え、それどういう意味ですか?」とズバッと問われて、思わず考え込んでしまう瞬間がたくさんあります。

     

    ある日、彼女がこんなことを言いました。

    「“大丈夫です”って、断ってるんですか?」

     

    僕:「……断ってるけど、確かに意味だけ見たら “OK” だよね(笑)」

     

    Sさん:「中国語だと “没关系” とか “我可以” のニュアンスでポジティブなんですけど、日本語の “大丈夫” は “いらないです” って意味になるんですよね? 不思議です。」

     

    その瞬間、頭の中に「たしかに!」が響きました。

     


    (中国語解説コーナー)

     

    • 没关系 (読み:メイクワンシー)
      意味:「気にしないで」という意味での“大丈夫”

     

    • 我可以 (読み:ウォクァイー)
      意味:「問題ないよ」という意味での“大丈夫”

     

     

    「大丈夫です」「結構です」=YESじゃないんです、日本では

    日本語には、“一見ポジティブな言葉” が実はNOを意味する表現がたくさんあります。

     

    • 「お茶いかがですか?」→「結構です」→ NO

    • 「手伝いましょうか?」→「大丈夫です」→ NO

    • 「一緒にどうですか?」→「いいです」→ 実はNO

    たしかに、英語圏の人が聞いたら「OKなのかな?」と思ってしまいそうです。

     

    Sさん曰く:

    「私は最初、“大丈夫です”って言われて“あ、お願いするってことだな”と思って、準備してたら、

    相手が“なんでやるの?”って顔をしていて、めちゃくちゃ混乱しました(笑)」

     

    これはもう、“言語の構造が違う”というより、“文化の仕組みが違う” としか言いようがありません。

     

     

    「お前」「貴様」が悪口になるのも日本語だけ?

    もうひとつ、Sさんに言われてハッとしたのが、「you」に相当する日本語表現の扱いです。

     

    Sさん:「“お前”とか“貴様”って、なぜ悪い意味なんですか?中国語と英語とスペイン語のyouは悪い意味がないです」

    (Sさんは4か国語話せる)

     

    たしかに……。

     

    “お前”も“貴様”も、本来は丁寧な表現だったはずなんです。

    • 「お前」=「御前」=尊敬語

    • 「貴様」=「貴いお方」=超敬語(戦国時代!)

    それが時代の変遷と共に、「上から目線」「乱暴な言葉」になってしまった。

     

    今では、職場で「お前」と言えばハラスメント扱いされることもある。

    言葉は生き物だと言いますが、ここまで意味が変わってしまうと、翻訳不能レベルの混乱を生んでしまいます。

     

    Sさん:「 “you” が失礼になる言語って、日本語くらいじゃないですか?」

     

    僕:「……たしかに、言われてみればほんとにそうだな」

     

     

    言葉の意味は“空気と文脈”で決まる、それが日本語

    こうした表現の根っこにあるのは、日本語が “言外の意味” に非常に敏感な言語だということです。

    • はっきり言わずに察する

    • あえて含ませて伝える

    • 空気を読んで意味を補う

     

    日本語のコミュニケーションは、“言葉+空気”=本当の意味という前提で成り立っている。

    だからこそ、「察せない人」にとっては本当に難しい。

     

    そしてそれが、異文化との間に“ズレ”を生む最大の要因になっています。

     

     

    グローバルの中で“曖昧な言葉”は誤解を生む

    技術の世界、ビジネスの世界、海外とのやり取り──

    今はすべてがグローバルにつながる時代です。

     

    そんな中で、日本語の「曖昧さ」「奥ゆかしさ」は、ときに致命的な誤解を生むリスクになります。

    • YESなのかNOなのか分からない

    • 曖昧にしたことでトラブルになる

    • 「空気で分かるだろう」が通じない

     

    Sさんのような“直球型”のメンバーと仕事をしていると、「丁寧=分かりづらい」となる場面に何度も遭遇しました。

     

    だからこそ、僕たち日本人は「自分が使う日本語」を、“相手目線”で設計する必要があると感じています。

     

     

    まとめ:丁寧さの美学 × 明確さの設計がこれからの鍵

    僕は、日本語の “曖昧な美学” が好きです。

     

    「断らない断り方」
    「察する優しさ」
    「言外に込めた気遣い」

     

    でも同時に、これからの時代に必要なのは──
    “はっきりと伝える力” と、“誤解されない設計力” だとも思っています。

     

    言葉は文化を映す鏡。

    だからこそ、文化の違いを面白がりながら、言葉の使い方も “アップデート” していきたい。

     

    「大丈夫です」はNOかYESか──

    それを “伝わる形” で伝える力 が、これからのコミュニケーション力なんだと思います。

     

     

     

     

    著者情報


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    中平 裕貴(Yuki Nakahira)

    株式会社エスワイシステム 関東事業本部

    関東第2事業部 3SEシステム6部 事業部長代理

     

    『技術 × 事業戦略 × 組織運営をつなぐ実務家』

     

    エンジニアとしての技術的な知見を持ちながら、営業・事業運営・HR・組織マネジメントの視点も持つ実務家。

    エンジニア、グループ会社経営、営業を経験し、技術とビジネスの両方を理解した「橋渡し役」として事業推進に携わる。

    技術と組織運営をつなぎ、主体的なチームを育て、人々が「WONT TO」で動ける社会を目指す。

     

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