中平コラムSeries58:部下を“正す”より、まず “すり合わせる” って話
「正す」より「すり合わせる」マネジメントと、視界を切り替える “スイッチ&フォーカス” の実践例をご紹介します。

こんにちは、エスワイシステム関東の中平です。
「ちょっと聞いてくれます? もう限界ですよ。」
ある日、部下からこんなセリフを聞かされました。
普段はまじめで責任感のある社員。
だからこそ、社内業務の期限を守らず、他部署からクレームが来たときには正直ショックでした。
「現場で1人月以上動いてるんですよ? なのに社内業務まで求められて、残業みたいなもんじゃないですか。」
「給料に見合ってないし、管理職って報われない。エンジニアに戻りたい気持ちもあります。」
「でも、自分なりには頑張ってるんですよ…。言い方ひとつで腹立たしくもなるんです。」
...心の声があふれるように出てきました。
表面の言動ではなく、「暗黙の前提」を見る
その時思い出したのが、先日社内管理者向けの研修のコンテンツ “すり合わせるマネジメント” という考え方です。
部下の言動を表面的に見て「なぜやらなかったのか」と叱っても、実は根っこにある “考え方” がズレていれば、行動は変わらない。
今回の部下で言えば、
「忙しい自分が社内業務を抱えるのは不合理」
「給料に見合ってないから、やらないといけないこと以上はやらなくていい」
というような “暗黙の前提” がありました。
ここを見ないまま「ちゃんとやってくれ」と言っても、また同じことが起こるだけです。
スイッチ&フォーカス──部下の視界を切り替える
そのズレを解消するためにあるのが、「スイッチ&フォーカス」というコミュニケーション技法。
これは、部下の “見えている世界” を広げることで、行動の動機づけを変えていくやり方です。
具体的には、以下のような切り口で伝えていきます。
・タイムスイッチ(短期→中長期)
「今は確かに大変だけど、こういう場面での行動が “信頼できる管理者” としての評価を作るんだよ。」
・ズームスイッチ(視野を広げる)
「他部署から見れば、チーム全体としてどう見えるかが重要で、あなたの大変さまでは見えない。だからこそ、あなたの動きがチームの印象を決めるんだ。」
・ゴール/チャンス/リスクフォーカス
「ここをやりきることで、次のチャンスが見えてくる。逆に、 “やってない” という印象がついてしまうのは、すごくもったいないよ。」
この伝え方によって、部下の表情が少しずつ変わっていくのを感じました。
ただ指摘するのではなく、 “見えていなかったもの” に光を当てる。
それだけで、行動の理由が変わるんです。
「正す」ではなく「すり合わせる」
管理職の仕事は、部下を正すことではなく、部下の前提と組織の前提をすり合わせていくこと。
「自分はこういう視点で動いている」「でも組織としては、こうあってほしい」
その間を埋める言葉と態度が、信頼や行動変容を生んでいくのだと、改めて感じました。
終わりに
部下のミスにイラッとしたときこそ、「なぜこの人はそう考えたのか?」と、自分に問いかけてみる。
怒るより、教えるより、まず “すり合わせる” 。
それが、信頼を失わずに組織力を高める唯一の方法なのかもしれません。
著者情報
中平 裕貴(Yuki Nakahira)
株式会社エスワイシステム 関東事業本部
関東第2事業部 3SEシステム6部 事業部長代理
『技術 × 事業戦略 × 組織運営をつなぐ実務家』
エンジニアとしての技術的な知見を持ちながら、営業・事業運営・HR・組織マネジメントの視点も持つ実務家。
エンジニア、グループ会社経営、営業を経験し、技術とビジネスの両方を理解した「橋渡し役」として事業推進に携わる。
技術と組織運営をつなぎ、主体的なチームを育て、人々が「WONT TO」で動ける社会を目指す。
🛠 技術領域
アプリ開発、クラウド、データ分析、AI、
📈 事業・営業経験
SI事業の拡大、プロジェクトマネジメント、アジャイル
🏗 組織マネジメント
リーダー育成、組織改革、チームビルディング
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