中平コラムSeries73:業界別 “システム感度” 診断─その要件、文化か、伝統か、それとも宗教かって話
業界ごとに異なる“システム文化”を面白おかしく解説。あなたの業界、何宗ですか?

こんにちは、エスワイシステム関東の中平です。
これまでいろんな業界とシステムを作ってきましたが、つくづく感じるのは、
「業界が違えば、システムの“常識”も違う」
ということ。
今日はちょっと、業界ごとの “あるある” を交えながら、システム開発で遭遇する文化の壁と笑撃の瞬間を語ってみたいと思います。
【リテール】秒で変わる!現場ファースト・UX信者の世界
リテール(小売)界隈はこうです:
「明後日から新キャンペーン始まるから、それに対応しといてね!」
業務フローも、商品カテゴリも秒で変わる。
UIが0.5秒モタついたら「使いにくい!」と全否定されます。
📌特徴
・設計より「触ってすぐ使えるか」が最優先
・エクセル + LINE のコンボが最強ソリューションだったりする
【物流】ハンディは命、ネットワークは“神頼み”
物流システムの現場に足を踏み入れると、まず出迎えてくれるのが…
「このハンディ端末がないと業務が終わる」
…という謎の儀式感。
バッテリーが切れた瞬間に、倉庫の時が止まる。
そしてネットワークが1秒遅延すると、「回線が死んだ」と言われる。
📌特徴
・ハンディはもはや信仰対象
・処理は全て “即時反映” でないと怒られる
・ダッシュボード作っても、最終的に紙貼って運用されがち
【不動産】法改正と帳票変更の阿鼻叫喚地獄
不動産業界は一見レガシーっぽいですが、油断してはいけません。
定期的にやってくる法令改正アップデートで、帳票の地獄絵図が始まります。
「すみません、この“借主”って文言を “乙” に変えるだけなんですが…」
だけ、じゃねえ!
帳票テンプレート45種、連動システム3系統、全部書き換え&テストの嵐。
📌特徴
・契約関連の帳票は “神聖な文書” 扱い
・「文言変えるだけ」と言われて3日寝れない
・紙文化とシステム文化が微妙に共存中
・UI改善しようとすると「冷たくなった」と怒られる不思議現象
【金融】セキュリティと承認フローと “様式美”
金融は、システムというより儀式に近い。
「APIを一本通すのに、稟議書・セキュリティレビュー・監査委員会の3連コンボです」
そこまでして通したAPIが返すのは「200 OK」の一言。
でもその一言の重みはお経10巻分。
📌特徴
・承認フローは “ダンジョン”
・小さな改修に6か月、でも本番移行は金曜夜にしれっとやる
・古のCOBOLが今も現役、レガシーは “神棚” にある
【通信】スケールは神、仕様は謎、ルールは口伝
通信系はだいたい巨大システム。
でも仕様書は…?
「え?その仕様は◯◯さんから代々口伝で…」
そう、伝統芸能の世界です。
そしてバッチ処理文化が異常に根強く、
「1日1回バッチで連携するのが正しい」と言い切られる。
📌特徴
・ネットワーク構成図 = 古代遺跡の地図
・なぜか運用はチケット制なのに、期限は “空気で読む”
・“プロビジョニング” という言葉を使えば全部許される気がしてくる
で、我々は何してるのか?
業界を渡り歩きながら、僕が気づいたことがあります。
「 “正しい” システムじゃなく、“その業界で生き残る”仕組み を作るのが仕事だ」
属人化や紙文化があっても、その中で “変えられる部分” を少しずつデジタル化しながら、文化に喧嘩を売らずに仕組みを作る。
我々はエンジニアである前に、
“文化翻訳者” であり、ときに “帳票修正僧侶” であり、ハンディ端末を祀る “物流神社の神主” でもあるわけです。
著者情報
中平 裕貴(Yuki Nakahira)
株式会社エスワイシステム 関東事業本部
関東第2事業部 3SEシステム6部 事業部長代理
『技術 × 事業戦略 × 組織運営をつなぐ実務家』
エンジニアとしての技術的な知見を持ちながら、営業・事業運営・HR・組織マネジメントの視点も持つ実務家。
エンジニア、グループ会社経営、営業を経験し、技術とビジネスの両方を理解した「橋渡し役」として事業推進に携わる。
技術と組織運営をつなぎ、主体的なチームを育て、人々が「WONT TO」で動ける社会を目指す。
🛠 技術領域
アプリ開発、クラウド、データ分析、AI、
📈 事業・営業経験
SI事業の拡大、プロジェクトマネジメント、アジャイル
🏗 組織マネジメント
リーダー育成、組織改革、チームビルディング
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