中平コラムSeries49:資格って“呪具”か?〜制度と現場のリアルを語るって話
資格制度は本当に有効か?現場と制度の狭間で揺れるエンジニアの育成と評価の在り方を、自身のキャリアと重ねて考察。

こんにちは、エスワイシステム関東の中平です。
今回は、「資格」について、少し踏み込んだ話をしてみたいと思います。
きっかけは、以前のコラム(Series47)で紹介したY君のエピソード。
AIと共生しながら現場で成果を出している彼が、「基本情報技術者試験」に落ちたとき、こんな言葉をつぶやきました。
「これ、AIに投げたら一発で答え出るんすよ。でも試験じゃそれできないんで、意味あるんすかね。」
──それは、ただの不満ではなく、「資格という制度のあり方」に対する鋭い問いでした。
(Series47記事はこちらから → 中平コラムSeries47:AIで覚醒した新人、資格試験でつまずいたって話)
そしてその問いは、実は、過去の自分自身にも突き刺さるものでした。
資格は “共通言語” であり、“測れないもの” の代替手段
僕らの業界は少し特殊です。
多くの場合、上司と部下が別の現場で、別のプロジェクトを担当しているという状況が珍しくありません。
つまり、毎日顔を合わせて仕事ぶりを見ているわけではない。
現場に密着していないぶん、「この人がどれだけ成長しているのか?」「本当にできるのか?」を直接観察できないのです。
だからこそ、資格という “見える評価軸” がありがたくもある。
全員が受ける同じ試験、同じ基準。その結果をもとに昇格や昇給を判断する。
制度としては、理にかなっています。
もちろん、資格には価値があります。
特に “現場を直接見られない” 僕らのような業界では、育成や評価の共通言語として非常に重要な役割を果たしています。
今回お伝えしたいのは「資格を否定する」話ではなく、「それ以外の価値をどう評価するか」という補完的な視点です。
でも現場では、“呪具を使いこなす術師”が求められる
とはいえ、現場ではそれだけでは測れない力があることも、同時に実感します。
たとえば、Y君のようにAIを駆使して、設計から調査、資料作成まで軽やかにこなす若手がいる。
明らかに成果を出しているし、チーム内でも「頼れる存在」になっている。
でも、資格は落ちた。
評価制度の上では、“基準未達”という扱いになります。
このギャップに、違和感を覚えるのは当然です。
僕も、“資格のない管理者”だった
実を言うと──僕自身も、資格未取得のまま昇格してきた人間です。
エスワイシステムには「応用情報技術者試験」を昇格要件のひとつに定めた制度があります。
でも、僕はその資格を取っていません。
取得しないまま、管理者になり、そのままグループ会社の代表に抜擢されました。
そして今、再びエスワイシステムに戻り、経営幹部の立場で現場や組織づくりに関わっています。
資格を否定したわけではありません。
ただ、“資格を持っていなくても、評価される道” を、僕は歩いてきたというだけの話です。
資格は“ルール”であって、“限界”ではない
資格には意義があります。
知識の体系化、基礎力の証明、そして組織的な評価のしやすさ。
でも、それはあくまで 「基準のひとつ」であって、すべてではない。
ましてや「資格がないから価値がない」と言い切ってしまえば、それこそ危険です。
現場で成果を出している。仲間から信頼されている。顧客から評価されている。
そんな “実績” や “信頼残高” をどう測り、どう評価するのか。
それは 資格という“呪具” では測れない、 “術師としてのあり方” なのかもしれません。
信じて評価するということ
評価者が現場を見ていない。
だからこそ、資格のような “共通言語” にすがりたくなる気持ちも分かります。
でも僕は、それだけでは足りないと思っています。
むしろ評価者が、 “現場を知ろうとする努力” や、 “問いかける対話” を積み重ねることで、
資格では見えない「人間の成長」をすくい上げられるのではないかと信じています。
「この人、いい目をしてるな」
「この提案、現場の本質を突いてるな」
「最近、あの子がチーム内で頼られてるな」
──そんな感覚も、評価の一部にして良いのではないでしょうか
まとめ:呪具の有無ではなく、術師の本質を見よ
AI時代の今、資格はもはや “絶対評価” ではなくなってきています。
ChatGPTに聞けば分かる問題。
現場で使わない技術の暗記。
“素手で戦え” と言われるような試験内容。
だからこそ、問うべきは
「資格を持っているか」ではなく、「現場でどんな変化を起こしているか?」ということだと思います。
資格制度があるからこそ、多くの若手が “成長の地図” を描けるのも事実です。
だからこそ僕は、「資格を取る意味はない」なんてことは1ミリも思っていません。
むしろ“資格を取りつつ、それだけでは測れない部分にも光を当てる”。
そんな組織になれたら最強だな、と思っています。
僕自身が「資格のない術師」として歩んできたからこそ、思うのです。
大切なのは “何を持っているか” ではなく、“何を起こしてきたか”。
そして、“どんな問いを持ち続けているか”。
“術具”を持つ術師も、持たない術師も。どちらも強く、どちらも認められる。
そんな多様性のある育成と評価を、僕らの組織は目指していきたいと思います。
著者情報
中平 裕貴(Yuki Nakahira)
株式会社エスワイシステム 関東事業本部
関東第2事業部 3SEシステム6部 事業部長代理
『技術 × 事業戦略 × 組織運営をつなぐ実務家』
エンジニアとしての技術的な知見を持ちながら、営業・事業運営・HR・組織マネジメントの視点も持つ実務家。
エンジニア、グループ会社経営、営業を経験し、技術とビジネスの両方を理解した「橋渡し役」として事業推進に携わる。
技術と組織運営をつなぎ、主体的なチームを育て、人々が「WONT TO」で動ける社会を目指す。
🛠 技術領域
アプリ開発、クラウド、データ分析、AI、
📈 事業・営業経験
SI事業の拡大、プロジェクトマネジメント、アジャイル
🏗 組織マネジメント
リーダー育成、組織改革、チームビルディング
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